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_まずは今季のコレクションのテーマを教えていただけますか?

出雲

今季は『リバース』です。Reverse=現状と向き合いつつ原点に立ち返り再度チャレンジすること。Rebirth=ファッションの原点を忘れず新たに生まれ変わること。回帰と再生。その両方の意味を持ったコンセプトを掲げてコレクションを展開しています。
もともと5351プール・オムというブランドはロックやモードといったイメージの強いブランドで、どこか尖ったエッセンスを含んでいます。ただ、時代を経るにつれブランドも成長し、服の作り方やテイストも少しずつ変わってきた。その変化をさらに進化させつつ原点を忘れずにブランドを作り続けることをテーマに掲げています。

小村

ブランドも僕らも、そしてお客様も一緒に成長してきて、角が取れてきている部分もある。いい意味で力が抜けてきている中で、このブランドらしさを残しながらどうやって今のファッションを表現していけるか。そのことを真剣に考えたシーズンと言えるかもしれません。

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_それはトレンドを取り入れるという単純な意味合いではなく?

小村

トレンドに迎合するのではなく、あくまでこのブランドらしく自然体でというイメージです。具体的にいうと、素材の選び方やシルエットの作り方など、物自体の作り方が大きく変わっています。例えば2020SSシーズンはジャケットやセットアップを多く展開していますが、テーラードのものだけじゃなくスウェットの上下セットアップや、半袖トップスとパンツのセットアップ、レザーのジャージの上下といった今までになかったものも多く展開している。特に象徴的なのはブルゾンで、これはある意味既存の5351プール・オムの価値観を破壊するものですね。

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出雲

このナイロンタフタのブルゾンは昨シーズンも作ったもので、これが2代目。他のブランドではよくあるアイテムですが、うちではタブーといってもいいくらいやっていなかった。そんな中、どうすれば他と同質化せず、オリジナリティを持って提案できるかを追求しました。まずこだわったのが素材ですね。一見シュリンク加工した生地に見えますが、実はこれはジャカードで表現した柄。こういうアプローチはまず他のブランドにはないと思います。デザイン面では、マルチポケット仕様にすることで、アウトドアフェスなどに行くときも手ぶらでいられる仕様にしていることもポイント。さらにベンチレーションも搭載しています。そして背中には蓮の花をモチーフにしたグラフィックが。ちなみに蓮には「再生」という意味(※)があるそうで、今季のコンセプトとシンクロしています。

※仏教では泥水の中から生じ清浄な美しい花を咲かせるハスの姿が仏の智慧や慈悲の象徴とされています。よい行いをした者は死後に極楽浄土に往生し、同じハスの花の上に身を託し生まれ変わるという思想があり、「一蓮托生」という言葉の語源になっています。

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小村

今までここまでスポーティなブルゾンは、ブランドとしてやる意味があるのかという懸念があった。とても新しいチャレンジではありましたが、結果、今はすごく人気を集めている。まさに新しい5351プール・オムに求められているアイテムだということを感じます。

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出雲

新しいアイテムではありますが、今までブランドが提案してきたラインナップともきちんと馴染むデザインになっていますし、これからブランドを知ろうと思ってくれている人にも取り入れやすいものになっている。ぜひいろんな方に見て欲しいと思っています。

タクティカルブルゾン
¥93,500(税込)

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_定番アイテムにも変化はあるのでしょうか?

小村

例えばセットアップやジャケットは、昔は肩パッドがしっかり入っていたりウエストにしっかりシェイプが入っていたりしましたが、今はよりナチュラルで軽やかな仕立てに変わっている。副資材をなるべく簡略化して、いかに軽くぬけ感のある仕上がりにできるかということを追求しています。

出雲

シルエットが2パターンあって、ひとつはシェイプがゆるくてナチュラルに着られるもの。もうひとつは、シェイプがしっかり入っているもの。これらもまた新しい定番としてすでに高い支持をいただいていますね。

小村

今は“日常着としてのセットアップ”という要素が強い。となると、いかに楽でいられるかというのが重要になります。なので、パンツのウエストをドローコードにしたり、ポケットはコンシールファスナーにして機能的にしたりしています。シルエットはヒップとワタリにゆとりがあって、膝下から極端に細くなるテーパードシルエット。少し丈を短めにあげて足元はスニーカーを合わせるイメージです。もちろんジャケットとパンツはそれぞれ単体でも活用しやすい。そういった意味でも人気が高いです。

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_色展開も絶妙ですね。

小村

鮮やかなブルーグリーン系は毎年展開するのですが、すごくリアクションが大きいですね。一見タイトに見えますが、パターンを研究することで動きやすさは確保している。その点も支持を得ているポイントだと思います。

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_デザインが変化していく中で『ここは譲れない』というポイントはどこにあるのでしょうか?

小村

具体的にいうのは難しいですが…単純に格好いいかどうかっていうことなんじゃないでしょうか。どんな年齢であっても格好良く洋服を着ていたいし、格好いい大人でありたいって僕自身も思う。結局そういうことなのかなって思います。

ハイカウントヴィスリーノッチドラペルジャケット

ハイカウントヴィスリーノッチドラペルジャケット
¥33,000(税込)

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ハイカウントヴィスリースリムテーパードパンツ
¥24,200(税込)

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_デニムもまたこのブランドの定番人気アイテムですが。

出雲

はい、このスキニーシルエットのデニムはもう5年ほど定番として絶対的な人気を集めるアイテムですね。

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_デザインが変化していく中で『ここは譲れない』というポイントはどこにあるのでしょうか?

小村

素材感や色味は微妙に変化させながら、展開を続けています。

出雲

以前はブーツカットなどもありましたが、今はスキニーシルエットのみ展開。足元の主役がブーツではなくスニーカーに取って代わったのが大きな要因だと思います。

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_この定番デニムが絶対的な人気を誇るその理由はどこにあるのでしょうか?

出雲

やはりシルエットの美しさに尽きると思います。

小村

これは本当に何度も試作を繰り返して、ようやくたどり着いた究極のシルエットなんです。脚のラインを美しく見せるスキニーシルエットで、ストレッチ性も抜群。素材も、ほぼオリジナルで開発したものです。

出雲

通常は芯となるストレッチの糸の周りを綿の糸でカバーするのがセオリーなのですが、これはストレッチの糸の周りをさらにストレッチ性のある糸でカバーすることで、独特のストレッチ性とキックバック性、そしてしっかりとした肉感が出せているんです。

小村

普通のストレッチ素材に加工を施すと繊維が壊れて生地が伸びてしまうことが多いのですが、これはそういったことにはならない。スキニーデニムの完成形に近いアイテムだと思います。

出雲

ちなみにこのデニムはインディゴに黒のオーバーダイを施したもの。リジッドデニムよりさらに深く見えるのが特徴。こういった、他にはない見えかたも常に模索しています。

ハイパワーストレッチスキニーデニム
¥30,800(税込)

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【5351×ZDA別注】レザーラインスニーカー
¥23,980(税込)

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_改めて、今季の5351プール・オムの世界観について、キーワードを挙げるとしたら?

小村

大人、軽さ、着心地、余裕…色々ありますが、やっぱり単純に“格好よさ”なんだと思います。それがブランドが持つDNAだし、強みでもあると思うので。ぱっと見でわかることじゃなく、5351プール・オムが築き上げてきたものの先に完成した、今の形を見て欲しいと思っています。

小村和久 5351プール・オム ディレクター
小村和久
5351プール・オム ディレクター

1973年生まれ、福岡県出身。
1998年にアバハウスインターナショナルへ入社。
2000年より5351プール・オムのチーフデザイナーを務め、
以降東京コレクションに参加。
2012年には、同ブランドのディレクターに就任する。
エレガントながらも、
どこかロックテイストな服作りに定評がある。

出雲龍馬 5351プール・オム デザイナー
出雲龍馬
5351プール・オム デザイナー

1979年生まれ、静岡県静岡市出身。
2006年にアバハウスインターナショナルに入社。
以降、5351プール・オムのデザイナーを務める。
スポーツ、パンクロックに精通した
デザインソースからのクリエーションが持ち味。